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竹田のファンクラブ

2024.9.09

 竹田のファンクラブと表現すると、何やら「竹田何某」さんの、押し活だと思われるでしょうが、前回の私のFCCグルーブブログに登場した「長湯温泉」は大分県竹田市直入町長湯と言う住所にあって広い意味で私は「竹田のファン」なのです。

 長湯に行くたびに、Facebook等のSNSに写真などをアップしていましたら、思わぬお誘いを受けました。「長湯ファンの由木さんに是非来ていただきたい」。そう言って頂くと、行かずにはおれません。

竹田のファンクラブ

 夕方から夜にかけての会合なので軽く軽食を取って出かけると、かなり見知った(以前にも数回訪れた)シェアオフィスに既に30名くらいの方々が静かに待ってありました。

 主催者の挨拶・趣旨説明の後に驚いたことに竹田市長が登場されました。ホールではなく、シェアオフィスに(失礼な言を言っております)。

 竹田市長・土居昌弘氏。市長としてはかなり破格の個性の持ち主とお見受け致しました。挨拶に続いて、いきなり「能」のお謡いが始まった時にはぶっ飛びましたが、気さくで明るく、エネルギッシュな方です

その竹田市さんが、ここ数年力を入れているのが移住事業で、全市をあげてUターンやIターンに取り組んでおられます。いや、この地方の人口減に対応する施策としての「移住事業」はもはや日本の問題そのものと言えるかも知れません。

竹田市はデータとして見ると、人口18,447人(2024年8月1日現在)、全国792市の中で761位。その内本年度の割合で見ると65歳以上の高齢者が50.7%。過去5年間の増減率は−8.9%。日本の典型的な地方都市そのものの数値です。この数値には勿論、美しい自然や人々の暮らし、城下町としての歴史や遺産、そこに暮らす人々の姿は残念ながら反映されていません。

移住事業を語る時、避けて通れない問題は「仕事」の問題です。どうやって生活をその地で成り立たせていくのかは大きな問題です。が、地方の市町村には新しい「仕事」を創出する「力」がない。日曜日の夕方に民放で「人生の楽園」と言う番組が放送されていますが、紹介されている方々の大半は定年後の第二の人生で、退職金等の私財を投入してカフェを営んだり、農業に携わる方々です。農業においては自分自身の口を潤す自給自足が基本で、事業化を考えて移住すると言う話では無いようです。が、これは個人の「楽園」の問題であるから、それで良いのです。国や自治体が考える移住はそうであってはならない。

竹田氏の良い所はこの「仕事」の問題について正面から取り組んでいるところです。

例えば、移住の前に宿泊が伴うインターンシップを設けて、竹田市の中の事業所で仕事経験を持ってもらう。その仕事をやって行けそうだと思ったら次のステップ。住み家を探す。当面の生活費を助成する。移住に対するバックアップがかなり強力です。

説明を一通りパワポ交えて聞いた後は懇親会となりました。先程まで大人しく静かに場を見守っていた参加者の方々が、まるで人が変わってように熱く語る場が出現し目を見張るばかり。私の痛恨のミスは食事と地元のお酒が提供される場に軽食を取り、車でやってきたこと(笑)。ですが、この場所で私史上中々会えない貴重な新種とも言うべき青年に出会いました。

彼の名は和田貫太氏。私の息子と1歳しか違わぬ年齢ですが、竹田市で起業する立派な事業家です。私も実は会社の創業者です。人口18,000の竹田市は人口1,645,000人の福岡市からは100分の1の規模で、創業社長の目から見るととても事業を起こし維持できるとは思えません。それを聞くと彼はあっさり「18,000だから起業しました」と言います。

「僕では東京や大阪で起業して成功するとはとても思えません。竹田だから成立するのです。僕のような若いやつを皆さんが応援してくれる。竹田では何でもやらせてもらえます」。

 この応えには驚きました。変な言い方ですが、「なるほど」と納得する驚きです。どのような事業をやっているのかを聞くと、カフェの運営、学習塾、そして竹田市の中にある建築会社の社員でもあると。学習塾?子供人口が少ない竹田で?そこにも、ちゃんと彼なりの読みがあって、間もなく採算ベースに乗るということでした。「??」ここでキャリアコンサルタントとしての私の興味がムクムクと頭をもたげて来ます。

「いろんなお仕事をしていますね。和田さんが自分の人生で重視していることは何ですか。」

「僕は、仕事は何でもいいんです。チャンスがあれば色んな仕事をしてみたいです。それよりも、豊かな暮らしがしたいんです。同じ30万円でも東京と竹田ではその価値が違うと思います。竹田では30万円で豊かに暮らせるのです。」

 「キャリアをデザインすると言うことは仕事だけではない」を彼の言葉から実感しました。 

素敵な青年と出会えたものです。

 早速、次の週の講義で「地方を人口減から人口増にするには」というテーマのワークショップをやってみました。すると、出るは出るは!!等身大の若者目線のアイディアが!中には本当に竹田市の移住担当の部署にお伝えしたいようなアイディアも。来夏は学生を引き連れて竹田市の移住インターンシップに参加したくなって来ます。

「人口増を狙うなら、子育て世代の移住です!しかもお子さんが小さくて二人目を竹田市で産みたいと考えるような」「すでにあるモデルケース、福岡市のエンジニア・フレンドシテイ福岡のような仕組みを使って農業からITへ」。何時になく活発な意見の交換が続きました。

 私の学生は半数は福岡出身ですが、半数は九州他県や山口県の出身。福岡も大半の学生は久留米、八女、飯塚等周辺市町村の出身者で、このテーマは身近な課題だったのかも知れません。「地方の課題を解決する」は、実は既に自然減に転じた日本の人口問題に繋がっています。いつになく、学生を心強く思えました。

最後に、思い切って依怙贔屓的に発言すると、竹田は素敵なところです。江戸時代から続く老舗の菓子舗「但馬屋」さんがあり(一度訪れるとドはまりします)、土日は予約の取れないイタリアンKana’s kitchen at RecaDがあり、駅前に可愛いパン屋かどパンがあり、すてきな建築の市民図書館があり。私の住みたい都市ランキングでは島根県松江市、石川県金沢市に続いて3番目の地位にあります。

ですが、移住は致しません。何故って私も間もなく竹田市で50.7%に属すようになるからです。

                           FCCグルーブ 由木 千尋

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