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働き方改革のキーワード

2024.6.07

働き方改革のキーワード

 学校教育の世界では、ここ数年、教員不足という深刻な課題に見舞われています。今年度も定数欠(決められた人員が配置されていない)でスタートした学校が全国にたくさんあるようです。その教員不足の大きな理由の一つが、教員の働き方にあり、長時間労働、クレーム対応に追われるなどいわゆるブラックだということです。

 先日、働き方に関する中教審答申が出されましたが、長時間労働そのものには手がつけられず、教職調整額を上げることで対応しようというものでした。この答申には現場の失望感が強く、チェックメイト感さえ感じてしまうことになりました。中教審そのものを改革しないと先に進まないのは、教育現場にとってお寒い答え以外の何者でもありません。

 そこで、今回は現場だけで働き方改革を進めるためのキーワードを示して、現場の働き方が少しでも適切になり、先生のキャリアが充実できるようするためにサポートできればと思います。そのキーワードとは「効率」と「効果」です。

 「効率」と「効果」は同じような意味もありますが、全く違う意味もあります。「効率」は目標や目的を達成するためのリソースや時間の使い方に関するものです。一方、「効果」は目標や目的を実現するために必要な結果や成果を最大化することです。この二つは、いずれも目標や目的を達成するためのものですが、効果的な手段を選ぶことで目標や目的を達成することができても、多くのリソースや時間を必要とするかもしれません。また、効率的な手段を選ぶことで、リソースや時間は節約できるかもしれませんが、それが効果的かどうかはわかりません。要するに、「効率」と「効果」は目標や目的のための手段なのだけど、それは相反するところもあるということです。

 現在の学校の働き方改革を観察してみると、「効率」のみを重視しすぎる、もしくは「効率」という手段に偏っているような気がします。従来ある仕事を減らせずに、それをブラックにならないようにいかに効率的に取り組んで時間外をやらないようにするかに執着しているような感じです。あえて雑駁(ざっぱく)に言えば、このままでは、働き方改革でバーンアウトなんておかしな現象すら起こるのかもしれません。つまり、学校現場の働き方改革を観察していると、「効果」という視点が足りてないのでは?ということです。「効果」という視点を適切に活用するために必要なものは目標や目的です。本質的には「効率」にも目標や目的は必要なのですが、目の前の仕事を終わらせることだけを考えれば目標や目的は必要ありません。目標や目的がより重要性を持つのは「効果」の方です。「効果」は目標や目的が明確にならなければ、絶対に取ることができない手段です。

 それでは、学校での目標や目的は何になるのでしょう。企業で言えば、ビジョンなどに当たるものです。それは、学校では学校教育目標になるのではないでしょうか。ところが、ほとんどの学校で学校教育目標は教育基本法の文言のようなものになっています。読んでみると、覚えられない、そしてイメージできないものが多いのに気づきます。したがって、目標や目的として効力を発揮するようなものになっていないのが現状ではないでしょうか。

 そうであれば、学校教育目標をみんなが覚えられて、イメージでき、「効果」や「効率」を考えることができるようなものにすることが重要だということです。目標や目的を明確にして(イメージできるものにして)、「効果」を考えて教育内容を取捨選択し、軽くすることがポイントだということです。

 実は中小企業においても、ビジョンが決められているものの、社員のものになっていないものが多くあります。そのような会社で働き方を変えていくことは「効率」という手段のみに頼らざるを得ず、「効果」を考えることができていないのではないでしょうか。そう考えると企業も学校と同じ病を抱えると考えても良いのでしょう。

代表理事 横田 秀策

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