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共同体感覚溢れる社会へ

2023.3.10

 3月に入り、一段と暖かさを増し、春の訪れを実感する季節になっています。

共同体感覚溢れる社会へ

 しかし、一方では中学校を舞台に、無差別殺人を意図していたと思われる中高生による傷害事件が立て続けに2件起こり、暖かさとは裏腹に背筋が凍りつくような思いを味わうことになりました。青少年の犯罪は減少しているそうですが、1990年代半ばから青少年によるショッキングな事件が増えたように感じます(この感覚は個人的なものかもしれません)。

 事件を起こした少年がなぜこのような事件を起こしたのかを究明することも大切だと思いますが、それ以上に、現在の社会のどこに問題があり、どのように対応していけば、少年がこのような行為を起こすことがなかったのかを考えることは、それ以上に重要なことではないでしょうか。

 この問題への対応の鍵は、アドラー心理学の共同体感覚にあるのではないかと思います。共同体感覚には所属感、信頼感・安全感、貢献感の3つの感覚が備わっていることや、共同体感覚を実践すること、言い換えれば、コミュニティーに貢献することで、所属感を培い、所属感があることで貢献感を培う関係を作ることが大切です。

 ここ数年、私はより良い社会を作るためには、ダイバーシティ&インクルージョンと心理的安全性の確保、そしてリーダーシップの育成が三位一体で必要であると考え、お話しすることがありました。よく考えれば、ダイバーシティ&インクルージョンは多様性の受け入れと捉えることが多いですが、その場がその場に存在する全ての人の居場所になっていると言うことであり、アドラー心理学でいう所属感です。そして、心理的安全性の確保はいずれの人にとっても安全安心な場所になっているということで、アドラー心理学で言えば信頼感・安全感です。また、リーダーシップの育成は、この場合、シェアド・リーダーシップ(全員発揮型のリーダーシップ)の意味として使っていますので、アドラー心理学でいう貢献感ということになります。結局、なんだかんだと新しい用語を並べてみても、アルフレッド・アドラーが考えたことの域を出ていませんね。アドラーにやっと時代が追いついてきたということなのでしょう。

 前述のような少年事件が起こらないようにするためのヒントもアドラー心理学にあるのではないかと考えると気になる言葉が明確になります。アドラーが共同体感覚の説明で使った「他者の関心に関心を持つ」という言葉です。精神的に困っている人、落ち込んでいる人に「あなたは大丈夫」という励ましは自分の対象者への関心で発する言葉です。決して励ましの声をかけることは悪いことではありませんが、受け入れられるかどうかは対象者次第です。

 それに対して「あなたは何が心配なの?」「どんな気持ちになっているの?」と対象者の考えや心情について関心を持ってアプローチすることは対象者にとって励ましより遥に受け入れやすいものになります。そのことが人と人との繋がりを作っていきます。

 もし、事件を起こした少年の関心に早い段階から、周りの大人が関心を持っていたら、もし、学校の同級生が少年の関心に関心を持って接していたら、もし、少年と周りの人間が関係をきちんと築いていたら、結果は変わっていたかもしれません。

 自分達がこれから取り組まなければならないのは、この「もし」をIfではなく、これからの取り組みとして実現していくことではないでしょうか。そのために、まず、周りの人、出会う人の関心に関心を持つことから始めなければなりませんね。

代表理事 横田 秀策

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