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アドラー、すごいぜ!

2021.7.10

 先日、学校の先生たちと学習会を行いました。この学習会は8年ほど前から行っていたものを、私の退職を機にリニューアルし、学校でのキャリア教育の担い手を育てるために行っているものです。テーマは「自己肯定感と自己効力感-自己肯定感と脳の関係から向上への道を探る-」でした。4月に先生たちにアンケートを行い、その中でもキャリア教育に関係することで学びたいと回答が最も多かったものをテーマにしました。

 「あの子、自己肯定感が低いよねぇ〜」と学校現場ではよく言われるものの、自己肯定感とは何か、それを向上させるためにはどうしたら良いかについては学校現場では深まっていません。多分、学校の先生だけでなく、世間一般でそのような状態ではないかと思います。せいぜい、自己肯定感が「今の自分でいいんだと思う感覚」や「自分を肯定的に感じる感覚」とぐらいまでは理解されていても、それをどうやったらあげることができるのかまでは行きついていないようです。よく「経験を積ませればいいんだ」とか、「褒めることで自己肯定感は上がる」という声は聞きますが、学校現場で実践している先生はわかると思いますが、それでは到底上がらないので、全く腹落ち感がないのです。とりわけ、自己肯定感崩壊状態にある子どもを目の前にした時にどのようにアプローチすれば良いかについては全く手探りの状態です。

その向上へのアプローチを脳科学とアドラー心理学から探ろうとしたのが、今回のテーマでした。脳科学の発展は凄まじく、その活用価値の高さに驚くことがありますが、アドラー心理学にはもっと驚かされることがあります。アドラー心理学は、今から100年ほど前に活躍した心理学者アルフレッド・アドラーが始めた心理学です。そのアドラーは晩年、共同体感覚の実践(より良い社会づくりへの関わり方)を提唱し、情熱をそそぎました。そして、共同体感覚の実践について、アドラーは「自分関心以上に、他者の関心に関心を持つ」ことが重要だと語りました。他者に関心を持つのではなく、「他者の関心に関心を持つ」のです。これが自己肯定感を向上させるキーポイントでした。脳科学の研究成果はその裏付けと捉えることができました。脳科学の「の」の字もなかった時代に、「他者の関心に関心を持つ」に行きついたアドラーはどれだけすごいのだろうと思います。○HKで「○虫すごいぜ!」と言う番組がありますが、自分の中では「アドラー、すごいぜ!」と言う番組を作りたい気持ちでいっぱいになっています。

これだけにとどまらず、アドラー心理学でも有名な早稲田大学の向後千春先生は、先日のブログで、現在、学習効果を上げるために重要視されているインストラクショナルデザインはアドラー心理学の5つの基本前提とほぼ同じであることを指摘されています。また、最新のモチベーション理論であるプロソーシャル・モチベーションは共同体感覚の実践と繋がってきます。もちろん、100年前の研究者・実践者なので限界はありますが、その凄さに「どんだけ〜ぇ!」と叫びたくなります。まさに「アドラー、すごいぜ!」

代表理事 横田 秀策

アドラー、すごいぜ!

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