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キャリア教育のキモ

2021.9.10

キャリア教育のキモ

 キャリア教育の重要性が語られるようになって20年以上が経ちました。1999年12月に中央教育審議会が出した「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」、いわゆる接続答申でキャリア教育という用語が初めて登場しました。その3年後に国立教育政策研究所からキャリア教育に関する調査研究報告が出され、文部科学省に「キャリア教育に関する総合的調査研究者会議」が設置されました。

 現在の学習指導要領の核は、アクティブ・ラーニングとキャリア教育だと言われています。しかし、この20年を超える期間でどれほどのキャリア教育の進展があったのでしょうか。確かに、20年前と比べると学校においてキャリア教育という用語は市民権を得ました。そして、それなりのキャリア教育と言われる授業が学校では実践されるようになりましたが、児童・生徒にとって最も必要なキャリア教育のキモの部分は十分浸透していないのではないかと思います。それは、学習指導要領では総論においてキャリア教育を「特別活動を要として」取り組むとされているのに対し、ほとんどの現場の学校では総合的な学習の時間で取り組んでいることからもわかります。

 現在の学習指導要領におけるキャリア教育の考えは、ライフキャリアレインボーなどで有名なドナルド・E・スーパーの考えを基礎にしたものです。スーパーは自己概念を提唱したことでも有名です。文部科学省が提唱するキャリア教育ではもちろん自己概念は重要な概念として捉えているので「特別活動を要として」取り組まないといけないわけです。

 自己概念は自分で自分を捉えたときにイメージであり、自己像ともいいます。自己◯◯という用語は、他にも自己肯定感、自己効力感などキャリアに関する用語だけでもたくさんありますが、それが形成されるための出発点は全て自己認識(セルフアウェアネス)です。自己認識(セルフアウェアネス)は「自己のことをどう捉えているか」ということであり、それには価値観、興味・関心、強み、志向性、嗜好性、感情、身体反応など、様々なものが関係します。私はこの自己認識(セルフアウェアネス)についての学習が日本の学校で行われていないことが最大のポイントだと捉えています。

 今までの学校はどうしても「教える」という面が強く、自分のことより全体のこと、周りのことを重要視する傾向が強かったので、自分のことを考える、自分を感じるなど自己認識(セルフアウェアネス)はほとんど注目されていませんでした。そのことが自己認識(セルフアウェアネス)を欠いたキャリア教育、言い換えればアンコのないアンパン、もっと言えば、顔のないアンパンマンのような状態を作り上げる結果につながっています。従って、日本の学校がキャリア教育の充実に向けて真っ先に取り組むべきことは自己認識(セルフアウェアネス)への取り組みを充実させることではないでしょうか。その取り組みが行われて、一人一人を大切すること、そしてVUCAの時代を乗り切る力を児童・生徒、そして学生につけることができるのだと思います。

代表理事 横田秀策

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