おじさん問題と学校教育
2021.12.10
今年もいよいよ残すところ20日余りです。国内ではコロナの感染状況がとりあえず落ち着きつつある一方で、オミクロン株の出現で世界ではまた感染者が急増するという、ジェットコースターのアップダウンを思い出させるような状況が続いています。
さて、今年という年は皆さんにとってどのような年でしたか?この問いへの答えは人によって本当の様々な答えがあるのだろうと思いますし、同じ個人でも時期によって答えが変わってくるのかもしれません。
私にとっては、教員から基本的にフリーランスへ働き方を変えた大きな区切りの年であり、また、11月には『 学校が苦手な子どものためのアドラー心理学 』を共著で出版し、思いがけない出版という経験をさせていただいた年でした。
この本は3月まで勤めていた学校で取り組んだ学校教育改革をベースにしたもので、これからの学校教育の姿を、不登校や発達障害など現在の学校を苦手としている子どもとの関係で書き、それを共著者の山口麻美さんにアドラー心理学の視点で深めていただいたものです。
これからの学校教育は子どもたちの多様な個性に対応したモデルになっていく必要があります。その意味ではダイバーシティの推進が大切です。また、いかなる子どもの学びを育んでいくためにも心理的安全性の確保が必要です。そして、その中で子どもたちが自分の強みや良さを活かしてより良い集団や社会を目指しながらリーダーシップを発揮できるようにならなければなりません。
このように書き連ねると、あることに気づきました。それは、現在の多くの学校の問題と「おじさん問題」が似ているということです。現在、日本では「おじさん問題」が大きな波紋を広げています。「おじさん」とはテレワークやニューノーマルといった新しい働き方の変化に対応できない人を指し、「おじさん問題」とは、変化を拒む「おじさん」の存在によって生産性の向上が妨げられたり、働きやすい職場を作り出すことが妨げられたりしていることを意味します。山口周氏はそれらのミドルやシニアを「オッサン」とよび、次のようなある種の行動様式・思考様式を持った人々だと指摘しています(『劣化するオッサン社会の処方箋』)。
1 古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する
2 過去の成功体験に執着し、既得権益を離さない
3 階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る
4 他所者や異質なものに不寛容で、排他的
3は多少違うかなと思いますが、1、2、4は現在の多くの学校にはびこっていると感じられる方も多いでしょう。サイボウズの青野慶久氏は日本の給与水準が低いことの原因はアップデートできない「オッサン」がジェンダー問題を放置していることにあるとブログで主張しました(2021.11.7)。確かに、本質的な目標に向けた学校の教育効果も今のままでは上がりません。その点で学校は本当に社会の縮図なのです。
代表理事 横田 秀策