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青雲之志

2022.3.25

春、三月。今年も卒業のシーズンを迎えました。コロナの下での卒業式も早三年目を数え、勤める専門学校では今年も私たち講師はオンラインでの参加でした。就職支援を生業としている私としては、一緒に就活で伴走した数多の学生に直接「おめでとう」を言えないことが心残りです。これから始まる長い職業人としての人生が豊かで、その個人にとって満足のいくものであることを切に願うばかりです。

昨年秋に上梓されたリンダ・グラットン(アンドリュー・スコットとの共著)の「ライフシフトⅡ100年時代の行動戦略」によればGDP(国内総生産)が目覚ましく成長すると、その国での平均寿命が著しく伸び、その反面少子化が進むということが指摘されています。国に例外は無く、GDPが成長する全ての国でこの傾向は見られるそうです。前作「ライフシフト人生100年時代の人生戦略」の中でも挙げられていたように、今のZ世代と呼ばれる若者は押しなべて長い職業人生を送ることになるようです。だからこそ、その働き方やキャリアデザインがこれからの人生の中で大切になってくるでしょう。

今、卒業して社会に船出する若い世代の何人が、そんな視点を持っているでしょうか。会社に入れば安泰、職に就いたら道は定まったと考えるのは早急です。長い人生は山あり谷あり。これから未来に一つの仕事、一つの会社に安住できる人はほぼいないと言えます。厚生労働省が令和2年に統計した「雇用動向調査結果の概要」というデータによると、24歳以下の離職率が最も高く、新卒1~2年目での離職率は男性29.1%女性28.4%にも上ります。
そんな時代には何が個人の資質・能力として求められるのでしょうか。私はそれを、自分自身を「再構成する力」であると考えています。私たちは失敗から学ぶだけではなく、成功からも学ばねばなりません。そして時に応じて学びなおし、自分自身の改革者である事を恐れない勇気が必要です。

私はキャリアコンサルタントになってキャリアに対する理論を沢山学びましたが、その中でもJ.D.クランボルツ先生が提唱された「ハプンタンス・ラーニング・セオリー」に親和性を感じています。この理論は「個人のキャリアの8割は、予期しない偶然によって形成される」というものです。では、何もしないで只、偶然に起こることを待つのかというと、そうではありません。偶然の出来事を自分のキャリアに反映させるには以下の観点が重要とされています。

・好奇心を持つこと
・持続性 失敗しても諦めずに続けること
・柔軟性 自らの固定観念に囚われないこと
・楽観性 上手くいくと信じること
・冒険心 不確実性が高くてもリスクをとって進むことを恐れないこと

簡単ではありません。特に「冒険心」については。でも、これから社会に出ていく皆さんには、あえてリスクを取る勇気を持って欲しいと思います。それは何故か。
先ほど書いた「自分自身の改革者」であることは、とても難しいからです。私たちは皆、それほど勤勉でもそれほど忍耐強くもありません。できれば楽をして気軽に生きていきたいと思っているはずです。私も毎日だらだらと家で無為に時間を過ごし、ストレスなくNetflixに没頭していたいと思います。そうなのに誰がわざわざ火中の栗を拾いに行きたいと思うでしょうか。
ですが、自分の信念に従い思うべきところがあるなら、それが成功するかどうか分からなくても行動しなくてはならないのです。

人の持つ強みの中にも勇気(Courage)と勇敢(Brave)があります。優しいこと誠実であることと共にそんな冒険心を持っている事もこれからの100年時代を生き抜いて行く為に必要な力であるとエールを送りたいと思います。


専務理事 由木 千尋

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