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正解の幻想をこえる

2022.8.10

 学校が夏休みに入るとともに、就労支援事業の講師や、ライオンズクエストワークショップの講師の仕事、そして、プロボノでお手伝いしている学校のキャリア教育研修会の講師で、ただでさえ暑すぎる夏をもっとホットに過ごしています。体力的には大変ですが、なんとか乗り切っていきたいものです。

正解の幻想を越える

 講座やワークショップの講師をさせていただいている中で、最近、一つ気になることがあります。講座やワークショップの対象者は、先生を対象とすることがどうしても多いのですが、振り返りの場面で、参加した先生に振り返りの問いを投げかけると、明らかに言いたいこと(考えていることや感じていること)はあるのに、「私が言っていいのだろうか」「間違っていたらどうしよう」という「正解の幻想」とも言えるものに囚われ、意見や感想が出てきにくいケースがあることです。もちろん、私自身のワークショップの手腕が未熟であることは考えられますが、ライオンズクエストワークショップの場合、学校の先生に混じって参加したライオンズクラブメンバーの方が肩の力を抜いて素直に答えていただくこともよくあります。先生だから間違ってはいけないという気持ちもあるのかなと、「正解を答えなきゃと思ったでしょう?」と尋ねると、「はい、そう思ってしまいました。」という答えを素直に返してくれることもあります。

 学校の先生が「正解を答えなければ恥ずかしい」、「迷惑をかける」と思っているとすれば、その意識を持ちながら日頃の授業を行なっていると、知らず知らずのうちに、子どもにも正解を求めていることは至極当然に考えられます。そうすれば、先生の意識以上に子どもの中に「正解を答えなければならない」という意識を醸成することになります。先生が「正解の幻想」に囚われている状態では、子どもも「正解の幻想」に閉じ込められている可能性が高いということです。

 この問題について、人気ブロガーのちきりんさんが著書「自分の意見で生きていこう」(ダイヤモンド社)の中で、次のように考えを述べています。

 正解を求める問題はあるが、正解のある問題は調べればわかることであり、世の中の問題中ではごく少数である。それに対して、世の中の問題のほとんどは正解のないものであり、意見を必要としているものだ。そして、意見には「正しい意見」と「間違った意見」があるわけではなく、「自分の意見」と「自分と違う意見」しかない。だから「自分の意見は間違っている」と考える必要はない。

 きっちりその通りではないと思いますが、おおよそ前述のようなことを言われており、大いに納得できるところです。私も長年、正しい、正しくないについて、「極めて黒に近いグレーと白に近いグレーがあり、白と黒はない」と言ってきました。つまり、どのように一部の人が正しいと思う考え(意見・感想)でも、別の人から見れば正しくない、もしくは間違った意見に見えることがあるということです。そうであれば、正しい・正しくないはそれほど大きな問題ではなく、自分がどのような意見を持つかということが重要なのではないでしょうか。

 学校の先生が多様な意見や感想を自由に述べ合うことができるようことが、学校で子どもたちの自由に意見や感想を述べることができるようになる最短ルートかもしれません。少しでも早く「正解の幻想」がなくなるように、お手伝いしていきたいと思います。

代表理事 横田 秀策

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