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イチローと大谷選手に見る時代の違い

2023.4.23

イチローと大谷選手に見る時代の違い

 WBCで日本代表チームが優勝を飾ってから一ヶ月が過ぎました。長年、中学野球に携わってきた筆者としては今回の優勝は感慨深いものがあります。大谷翔平選手というスーパースターを中心にしていましたが、バランスの良い素晴らしいチームだったと思います。

 MVPの大谷選手はプレーヤーとしても獅子奮迅の働き、いや、これこそ異次元の働きでしたが、試合後のインタビューでも次のようなコメントで世界から称賛を受けました。

「日本だけじゃなくて、韓国もそうですし、台湾も中国も、その他の国も、もっともっと野球を大好きになってもらえるように、その一歩として優勝できたことが良かったなと思いますし、そうなってくれることを願っています」

 そのような中で、韓国スポーツ紙がイチロー選手の17年前のインタビューを引き合いに出しながら、大谷選手をインタビューの受け答えを含めて大絶賛したことが少し物議を醸しました。

 その時のイチロー選手のインタビューは「今後30年間、日本にはちょっと手を出せないなという感じがするように勝ちたい」、つまり、圧倒的な力の差を見せつけて勝ちたいと発言しました。当時も韓国を刺激した記憶があります。

 筆者はこのイチロー選手と大谷選手のコメントの違いに、時代の違いをすごく感じました。

 イチロー選手がコメントした2006年にWBCが始まった年です。当時の米国チームはトップレベルの大リーガーも出ず、3Aの選手も出ている状況で権威も何もあったものではありませんでした。これからWBCがどうなるのか予想できない時代でした。そのような時代にイチロー選手はWBCが今後権威ある大会になっていくためにもコメントしたのではないかと思います。ビジネスにおいても当時はMBA取得などが華の時代で、一番を目指すことがまだ重要な香りを匂わせていた時代です。振り返れば、イチロー選手のコメントはその時代を反映したものでした。

 それに対して、現在はVUCAと言われるつかみどころのない時代です。SDGsに代表されるように、より大きな課題を解決するためにグローバルな視点から多様な社会・人が一緒になって課題解決することが望まれています。大谷選手のコメントは日本の野球のためだけでなく、世界で野球が生き残っていく、そして、みんなに楽しんでもらうということを前面に押し出しています。まさに現代が必要としている視座をしっかり持っているということですね。

 この二人のスーパースターのコメントを比べてみると、イチロー選手のコメントが大谷選手のものに比べてスケールが小さいなどというようなものでなく、時代がスーパースターに求めたものだったのでしょう。それは同時に時代が若者に求めているものであり、その時代の若者の気質に大きく関わっていると感じます。

代表理事 横田 秀策

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